※本編では「AI」を使いません。
多くの企業が「リソース不足」を理由にマーケティング戦略の実行を停滞させています。
しかし、その原因の多くは本当に足りないのではなく、現状の資源を正しく整理・把握できていないことにあります。
戦略とは「資源配分の最適化」です。資源の全体像が曖昧なままでは、配分も最適化も実現できません。
本稿では、マーケティングに必要な「カネ・モノ・ヒト・時間・情報・知的財産」を体系的に棚卸しするための具体的な質問集をご紹介します。
これらを活用すれば、曖昧だったリソース状況が明確になり、戦略設計の精度と実行スピードが大幅に向上します。
「リソース」を整理する質問
※補足:記載されている質問は「最低限必要な項目」です。ビジネスモデルや状況に応じて整理すべきリソースは異なります。
※本稿では「AI」は使いません。各社毎のリソース状況は「人」しかわからないためです。
カネ
- 現在のマーケティング予算はどれくらいですか?
- 予算の中で最も多くの費用がかかっている活動や項目は何ですか?
- 今後のマーケティング活動で追加の予算が必要とされる場面はありますか?
- 過去のマーケティング活動のROI (投資対効果) はどれくらいでしたか?
モノ ※ビジネスモデルで質問内容は異なります。
- マーケティング活動に必要な物的資源は何ですか?
- 現在、これらの資源は十分に揃っていますか?
- 追加で必要な物的資源はありますか?
ヒト
- 全体
- マーケティングチームの現在のメンバー構成はどのようになっていますか?
- なぜ、そのような構成にしていますか?
- 今後、目指したい理想のチーム像はありますか?
- 現メンバーについて
- メンバー毎のスキルや専門知識は何ですか?
- 1年後、マーケティングにおいてメンバー毎になりたい姿はありますか?
- OKRなど、どのような人事評価制度を採用していますか?
- 採用について
- 追加で人員を増やす予定はありますか?
- 増やす場合、どのような人を想定していますか?
- 現在、どのような採用戦略をされていますか?
時間
- いつ頃からマーケティングに取り組まれましたか?
- 今回、どれくらいの期間で、マーケティング施策の成果・結果を考えていますか?
- IPO、新店舗出店、イベント実施など、期日が決まっている予定はありますか?
情報 ※ビジネスモデルで質問内容は異なります。
- 現在、どのようなマーケティング関連の情報を収集・分析していますか?
- その情報はどのようにして取得していますか?
- 顧客情報は十分かつ詳細に獲得できていますか?
- 営業からの情報は十分かつ詳細に獲得できていますか?
- 取得したい、ないしは、不足していると感じる情報やデータはありますか?
知的財産
- 御社が持っている知的財産(特許、商標、著作権など)は何ですか?
- これらの知的財産をマーケティング活動にどのように活用していますか?
- 知的財産の保護や管理に関する方針や取り組みはありますか?
- その他に、御社独自のノウハウだと思うものはありますか?
- ある場合、どなたがそのノウハウをお持ちですか?
リソース整理時のポイント
リソース整理において最も注目すべきは 「ヒト」と「知的財産」 です。
なぜなら、価値を生み出す源泉は常にヒトであり、知的財産こそが競合との差別化を可能にするヒントとなるからです。
マルクスの『資本論』でも示されている通り、資本家の利益を生み出す剰余価値(=労働者が生み出した価値のうち、賃金を超えた部分であり、資本家の利益の源泉)を増やせるのはヒトの労働力だけです。
『資本論』第1巻第4節では、マルクスが「資本家が労働力を購入し、それを使用することで、生きた労働が定立資本に付加され、価値を生み出す」と述べています。つまり、剰余価値を生むのは機械や原材料ではなく、むしろ労働力そのものに他ならないのです。
つまり、人の持つ力と、その人が蓄積した知識・経験を知的財産として具象化することが、マーケティング戦略において大きな意味を持ちます。
さらに、この2つを掛け合わせることで、他社には模倣できない独自の差別化要素が生まれるのです。
実際の事例として、弊社のお客さまである恒電社さまでは、施工管理の現場に携わるプロフェッショナルへのヒアリングを通じてFAQのコンテンツを抽出しています。
画像引用元:太陽光発電システム導入前に 知っておきたいポイント集
そこで得られる回答は、よくある質問であっても現場ならではの視点が反映されており、AIや検索エンジンでは決して出てこない情報が形になります
また、WOWOWコミュニケーションズさまでは、現場でコンサルティングを行う専門家に「インサイトの見つけ方」をまとめてもらいました。
その内容は、形式的なノウハウだけではなく、実際の現場感覚に根差したリアルな情報であり、他にはない価値を生み出しています。
画像引用元:インサイトの見つけ方
このように、人と知的財産に焦点を当てることは、単なるリソース整理にとどまらず、マーケティング全体の成果に直結します。
最終的な結論として、リソース整理の最大のポイントは 「ヒト」と「知的財産」 にあるといえるでしょう。
マーケターとして重要なのは、常に「目の前のこの人の素敵なところは何だろう」と問い続けることです。
そして、それを見つけたならば最大限に発揮できるように支援すること。なぜなら、剰余価値を生み出せるのは他ならぬ人間の労働力だからです。
>> 「【AI × 人】マーケティング戦略の作り方 - KGI・KPI編」
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