市場調査や競合調査の重要性は理解していても、具体的な進め方がわからず、手探りで取り組んでいる方は少なくありません。
特に競合の定義や調査範囲をどこまで広げるべきか悩むケースが多く見られます。
本稿で紹介するフレームワークは、AIによる叩き台作成から現場検証までを踏まえた実践的なアプローチをご紹介します。
- 「市場調査」「競合調査」の具体的な方法
- 調査4ステップ
- ファイブフォース
- 「5C x SWOT (定性:AI - Deep Research + 現場への聞き込み 定量:Similarweb)」
- 母数の整理
- 意識してること
- 市場調査ステップ
- 「5C x SWOT」と「ファイブフォース」
- 市場調査と競合調査の確定は反証後
- 1. 完璧を目指さず、まずは叩き台を作る
- 2. 競合調査は完璧にできない
- 3. それでも競合調査は欠かせない
- 4. ターゲットは最後にシンプルにまとまる
「市場調査」「競合調査」の具体的な方法
調査4ステップ
- 1.自社カテゴリーにおける上位商品群を特定 ≒ 競合調査
- 1-1.社内の営業の方々に「自社の競合は?」と伺う
- 1-2.「こちら」の動画通りに Similarweb で「競合」+「ベンチマーク」+「気になる対象」を抽出
- 2.カテゴリーの意志・利害・行動は? ※「Who・インサイト編」より「顧客インサイトは?」の「意思・利害・行動」より引用
- 意思( = インサイト = 人を動かす隠れた心理)
- 利害( = 何が意思決定をわけるのか? = このカテゴリーのプレファレンスは何か?)
- 行動( = 認知から行動までの流れは?ターゲットによって異なる?)
- 上記それぞれ「Who・インサイト編」で整理した「顧客インサイトは?」を記載
(ここから下は、この後の調査のまとめを記載する。)
- 3.「自社カテゴリーと上位商品群」の法則性を見出すべく、定量・定性調査を実施
- 後述する「業界分析まとめ」を端的に記載
- 4.競合との相対的な差を把握する
- 「What・戦略キャンバス編」に進む
3.「自社カテゴリーと上位商品群」の法則性を見出すために、下記の3つのフレームワークを実施します。
- ファイブフォース
- 5C x SWOT ※Similarweb 活用
- 母数の整理
ファイブフォース
買い手
- 下記3軸より、買い手の価格感度は上がっている?
- 競合商品と差別化されているか?
- 買い手のほかのコストや予算と比較して、相対的に高価であるか?
- 製品・サービスの質が買い手に影響を及ぼさないか?
サプライヤー
- 下記5軸より、サプライヤーの力は大きいか?
- サプライヤーが大規模で集中している場合
- 代わりのサプライヤーが(少なくとも短期的に)いない場合
- スイッチングコストがサプライヤーに有利に働く場合
- 差別化がサプライヤーに有利にはたらく場合
- サプライヤーが製造機能を垂直統合し、業界の製品を内製する可能性が実際にある場合
代替品
- 買い手にとって代替品に乗り換えるスイッチングコストは低いか?
新規参入者
- 下記7軸より、新規参入者は脅威か?既存企業はどのようにして参入障壁を高めるか?
- 生産量増加に対し、単位あたりコストは下がるかどうか( = 規模の経済)?
- 顧客がサプライヤーを変更すると、スイッチングコストが生じるだろうか?
- ある企業の製品の利用者が増えるにつれて、利用者にとっての製品の価値は高まるか( = ネットワーク効果)?
- 事業に新規参入するための「入場料」はいくらか?
- 業界の既存企業には、規模とは別に、新規参入者にもちえない強みがあるだろうか?
- 政府の施策は、新規参入を制限または阻止しているだろうか?
- 新規参入を計画している企業は、既存企業からの反撃をどのように予測しているだろうか?
既存企業
- 下記4軸より、競争は激しいか?
- 競合企業が乱立しているか、規模と影響力においてほぼ互角である場合
- 業界の成長が鈍いと、シェア争いが激化する
- 撤退障壁が高いと、業界から企業が退出しにくくなる
- 競合企業が事業に対して道理に合わない執着をもっている、つまり財務業績を最優先目標としない場合
- 下記4軸より、価格競争は起きそうか?
- 製品・サービスの見分けがほとんどつかず、買い手のスイッチングコストが低いか( = 競争の収斂)?
- 固定費が高く、限界費用が低いか?
- 生産能力の大幅な拡充が必要になっているか?
- 製品が陳腐化しやすいか?
業界は魅力的か?
- 業界の収益性はなぜいまのような水準なのか?収益性を支える要因は何か?
- 何が変わりつつあるだろうか?収益性は今後どのように変化するだろう?
- 自社が生み出している価値のとり分を増やすには、どういった制約要因を克服しなくてはならないだろうか?
- 競争要因の影響が弱い場所に自社をポジショニングできるか?
業界分析まとめ
- 業界を「製品の範囲」と「地理的範囲」の二つの面から定義するとどうなるか?
- それぞれの競争要因を構成する当事者は?(必要に応じてグループに分類)
- 当事者毎の競争要因を促進する要素(ドライバー)は?
- 一歩下がって全体的な業界構造は?
- それぞれの競争要因の最近の変化と将来起こりうる変化は?
プロンプト
あなたは戦略コンサルタントです。
Deep Research を活用し、指定した業界について「ファイブフォース分析」を行ってください。
# 指示
- 以下の設問集に、必ずすべて回答してください。
- 外部情報(記事、レポート、統計、ニュースなど)を優先的に利用すること。
- 情報が不足する場合は、仮説を必ず記載してください。
- 回答は各設問ごとに整理(見出し+箇条書き)。
- 出典がある場合は、簡潔に出典名や参考元を添えてください。
- 最後に「まとめ・示唆」を必ず記載してください。
対象業界 = 「〇〇業界」
---
ファイブフォース
買い手
下記3軸より、買い手の価格感度は上がっている?
競合商品と差別化されているか?
買い手のほかのコストや予算と比較して、相対的に高価であるか?
製品・サービスの質が買い手に影響を及ぼさないか?
サプライヤー
下記5軸より、サプライヤーの力は大きいか?
サプライヤーが大規模で集中している場合
代わりのサプライヤーが(少なくとも短期的に)いない場合
スイッチングコストがサプライヤーに有利に働く場合
差別化がサプライヤーに有利にはたらく場合
サプライヤーが製造機能を垂直統合し、業界の製品を内製する可能性が実際にある場合
代替品
買い手にとって代替品に乗り換えるスイッチングコストは低いか?
新規参入者
下記7軸より、新規参入者は脅威か?既存企業はどのようにして参入障壁を高めるか?
生産量増加に対し、単位あたりコストは下がるかどうか( = 規模の経済)?
顧客がサプライヤーを変更すると、スイッチングコストが生じるだろうか?
ある企業の製品の利用者が増えるにつれて、利用者にとっての製品の価値は高まるか( = ネットワーク効果)?
事業に新規参入するための「入場料」はいくらか?
業界の既存企業には、規模とは別に、新規参入者にもちえない強みがあるだろうか?
政府の施策は、新規参入を制限または阻止しているだろうか?
新規参入を計画している企業は、既存企業からの反撃をどのように予測しているだろうか?
既存企業
下記4軸より、競争は激しいか?
競合企業が乱立しているか、規模と影響力においてほぼ互角である場合
業界の成長が鈍いと、シェア争いが激化する
撤退障壁が高いと、業界から企業が退出しにくくなる
競合企業が事業に対して道理に合わない執着をもっている、つまり財務業績を最優先目標としない場合
下記4軸より、価格競争は起きそうか?
製品・サービスの見分けがほとんどつかず、買い手のスイッチングコストが低いか( = 競争の収斂)?
固定費が高く、限界費用が低いか?
生産能力の大幅な拡充が必要になっているか?
製品が陳腐化しやすいか?
業界は魅力的か?
業界の収益性はなぜいまのような水準なのか?収益性を支える要因は何か?
何が変わりつつあるだろうか?収益性は今後どのように変化するだろうか?
自社が生み出している価値のとり分を増やすには、どういった制約要因を克服しなくてはならないだろうか?
競争要因の影響が弱い場所に自社をポジショニングできるか?
業界分析まとめ
業界を「製品の範囲」と「地理的範囲」の二つの面から定義するとどうなるか?
それぞれの競争要因を構成する当事者は?(必要に応じてグループに分類)
当事者毎の競争要因を促進する要素(ドライバー)は?
一歩下がって全体的な業界構造は?
それぞれの競争要因の最近の変化と将来起こりうる変化は?
「5C x SWOT (定性:AI - Deep Research + 現場への聞き込み 定量:Similarweb)」
5C x SWOT:定性情報
- 自社(Company)・競合:3~5社(Competitor)のSWOTは?
- 強み
- 弱み
- 機会
- 脅威
プロンプト
あなたは戦略コンサルタントです。
以下の企業を対象に、5C分析の「Company」と「Competitor」に焦点を当てたSWOT分析を行ってください。
必ず下記のフォーマットで出力してください。
情報が不足する場合は仮説を提示してください。
対象:
- 自社(Company):{自社名を入力}
- 競合(Competitor):{競合A}, {競合B}, {競合C} … (3~5社を入力)
出力形式:
### 自社(Company)SWOT
- 強み(Strengths):
- 弱み(Weaknesses):
- 機会(Opportunities):
- 脅威(Threats):
### 競合A(Competitor A)SWOT
- 強み(Strengths):
- 弱み(Weaknesses):
- 機会(Opportunities):
- 脅威(Threats):
### 競合B(Competitor B)SWOT
(以下同様)
### 競合C(Competitor C)SWOT
(以下同様)
最後にまとめとして、
- 自社 vs 競合の差分
- 業界全体で共通している機会・脅威
- 自社の戦略上の示唆
を簡潔に示してください。
- 消費者(Consumer)の特徴は?
- 「顧客インサイトは?」+「AI - Deep Research」
- 中間流通(Customer)との関係は?
- 「AI - Deep Research」
- 地域社会への影響は?何を求められている?
- 「AI - Deep Research」
プロンプト
あなたは戦略コンサルタントです。
以下の商品・サービスを対象に、5C分析の「Consumer(消費者)」「Customer(中間流通)」「Community(地域社会)」について分析してください。
必ず下記の全設問に回答してください。
情報が不足する場合は仮説を提示してください。
調査はDeep Researchを前提として行ってください。
対象:{商品・サービス名を入力}
設問集:
### Consumer(消費者)
- 消費者の特徴は?
- 顧客インサイトは?
- 顧客インサイトについては、既に存在するドキュメント / PDFデータ / 同一スレッド内で抽出した情報を優先的に活用し、足りない部分をDeep Researchで補足してください。
### Customer(中間流通)
- 中間流通との関係は?
- 流通チャネル上でのパワーバランスや課題は?
### Community(地域社会)
- 地域社会への影響は?
- どのような期待や要請があるか?
出力形式:
- 各セクションごとに「見出し+箇条書き」で整理すること。
- 全設問に必ず回答すること。
- 情報不足の場合は「仮説」と明記すること。
5C x SWOT - 競合調査:定量情報 by Similarweb
- 合計訪問数
- 差、と、どこで上がって下がってるかを比べる
- チャネル別トラフィック概要 ※デスクトップとモバイル別
- 自社との違いからチャンスを見つける
- エンゲージメント指標
- 特に直帰率に着目
- 上位キーワードの検索 ※デスクトップとモバイル別
- 自社との違いからチャンスを見つける
- 指名検索≒ブランド名のみ ※デスクトップとモバイル別
- 前月から増えてるか?
- 非指名検索 ※デスクトップとモバイル別
- 自社との違いからチャンスを見つける
- オーガニックページ上位
- 競合の変化を見る
母数の整理
- 人口変数
- 想定顧客となる最大母数(全国/対象市場単位)
- 出店地域ごとの人口・世帯数・事業所数などの最大母数
- 地理変数
- 地域ごとの市場規模(売上高・人口・世帯数など)
- 各地域間の数値的な差異
- 心理変数
- 顧客の価値観・嗜好を数値化できるデータ(例:調査データでの「購買意向○%」「重視する要素ランキングと割合」など)
- 行動変数
- 顧客の購入行動に関する定量データ(例:平均購入頻度、リピート率、購買チャネル別比率)
- 時間
- 商品・サービス利用にかかる平均時間
- 他社比較(平均値、中央値など)
- 種類
- 商品・サービスのカテゴリー数(業界標準との比較)
- 他社との品揃え数・構成比
- 値段
- 自社の価格レンジと平均単価
- 市場平均価格、競合との価格差
- 場所
- 展開している拠点数、販売チャネル数
- 競合の拠点数・チャネル数との比較
- 量
- 出荷量・販売数量(年/月/単位ごと)
- 競合他社の出荷量推定
- サービスモデルフロー
- 顧客の認知→購入→利用→アフターサービスまでの各フェーズでの定量データ(例:CVR、継続率、解約率)
プロンプト
## 母数の整理(数値ベース版)
あなたは戦略コンサルタントです。
以下の商品・サービスを対象に、マーケティング戦略を立てるための市場調査・分析を行ってください。
必ず下記の全設問に回答してください。
情報が不足する場合は、仮説を必ず提示してください。
回答は「数値+出典データ元(例:総務省統計局、経産省調査、Statista、業界レポートなど)」を明記してください。
対象:{〇〇業界}
---
### 設問集(数値重視)
1. **人口変数**
- 想定顧客となる最大母数(全国/対象市場単位)
- 出店地域ごとの人口・世帯数・事業所数などの最大母数
2. **地理変数**
- 地域ごとの市場規模(売上高・人口・世帯数など)
- 各地域間の数値的な差異
3. **心理変数**
- 顧客の価値観・嗜好を数値化できるデータ(例:調査データでの「購買意向○%」「重視する要素ランキングと割合」など)
4. **行動変数**
- 顧客の購入行動に関する定量データ(例:平均購入頻度、リピート率、購買チャネル別比率)
5. **時間**
- 商品・サービス利用にかかる平均時間
- 他社比較(平均値、中央値など)
6. **種類**
- 商品・サービスのカテゴリー数(業界標準との比較)
- 他社との品揃え数・構成比
7. **値段**
- 自社の価格レンジと平均単価
- 市場平均価格、競合との価格差
8. **場所**
- 展開している拠点数、販売チャネル数
- 競合の拠点数・チャネル数との比較
9. **量**
- 出荷量・販売数量(年/月/単位ごと)
- 競合他社の出荷量推定
10. **サービスモデルフロー**
- 顧客の認知→購入→利用→アフターサービスまでの各フェーズでの定量データ(例:CVR、継続率、解約率)
---
### 出力形式
- 各設問は「見出し+箇条書き」で回答すること
- 各回答に「数値」と「出典データ元(例:総務省統計局 2023年調査、経産省『○○白書』、Statista 2024、業界団体レポートなど)」を必ず併記すること
- 情報が不足する場合は「仮説」と明記すること
「業界分析まとめ」+「5C x SWOT 」+「母数の整理」より、競争要因の影響が弱い場所に自社をポジショニングできるか? → 「What・戦略キャンバス編」に進む
意識してること
市場調査ステップ
市場調査のステップで最も大変なのは、やはり 競合の洗い出し です。競合は小さなプレイヤーまで含めれば数多く存在するため、どこまでを競合と定義するかは非常に悩ましい部分であり、明確な正解がないとも言えます。
1. 社内に聞くのが一番早い
特にB2Bマーケティングでは、営業部門に聞くのが最もシンプルかつ効果的です。営業は日々コンペや商談の現場に立っており、よく当たる競合や名前が頻出する会社については、すでに生の情報を持っています。B2Cにおいても同様で、社内で「よく出てくる競合」として挙げられる企業は、まず深掘りして分析する必要があります。
2. キーワードを起点に競合を探す
もうひとつの有効な手段は、SimilarWeb(シミュレーウェブ)を活用すること です。SimilarWebでは、キーワードを起点に競合を抽出できるのが強みです。
例えば「ジム」という商品・サービスを扱っている場合、多くの人は隣接するジムや有名ジムを競合と捉えがちです。しかし、ユーザーがジムを利用する背景を考えると、「健康になりたい」「スタイルを良くしたい」「痩せたい」といった動機があります。そこで「痩せたい」というキーワードを市場調査の起点にすると、ジム以外にも健康食品や自宅用トレーニング器具といった競合が浮かび上がってきます。
つまり、競合とは必ずしも同業他社に限られるものではありません。「ユーザーが解決したい課題に対して、別の解決策を提示している存在」こそ競合 なのです。そのため、業種や形態で区切るのではなく、ユーザーのキーワードを起点に広く競合を抽出することが重要です。
3. 結論:競合定義のポイント
市場調査において競合を定義する際は、
- 社内からよく名前が挙がる企業は必ず深掘りする
- SimilarWebなどのツールを使い、キーワード軸で広く競合を見つける
- 「同業他社=競合」とは限らない。課題解決の方法を提示している存在を競合と捉える
この3つを意識することで、より実態に即した競合マップを描けるようになります。
「5C x SWOT」と「ファイブフォース」
マーケティング戦略を立てる際、5C分析とSWOT分析を掛け合わせて活用することがあります。このプロセスで私が意識しているポイントをまとめます。
1. まずはAIでざっくり叩きを出す
最初のステップでは、完璧な答えを出そうとする必要はありません。重要なのは AIを活用してざっくりとした叩き台を作ること です。ここでの目的は完成度の高い分析結果を得ることではなく、全体像を俯瞰するための「素案」を早めに出すことにあります。
2. 主観や直感も積極的に活用する
次に、マーケター自身の 主観や直感 を盛り込むことを大切にしています。特に戦略を引く立場にある人は、自分の経験や直感を鍛える意味でも、業界に関する書籍や事例を読み漁ることを強く推奨します。定性的な判断を積み重ねることで、AIが出した叩き台に「人間ならではの視点」を加えることができます。
3. 現場での検証を必ず行う
最後に欠かせないのが 現場でのヒアリングと検証 です。AIと主観による叩き台はあくまで仮説に過ぎません。必ず現場の方々に聞いて、彼らが感じている温度感や実態を確認することが必要です。このプロセスを経ることで、戦略としての精度が大きく高まります。
結論として、5C×SWOT分析は「AIで叩きを出す → 主観と知識で補強する → 現場で検証する」という流れを意識することが重要です。この3ステップを踏むことで、机上の空論ではなく、実際に機能する戦略を描くことができます。
市場調査と競合調査の確定は反証後
市場調査や競合調査の結果を「確定」させるのは、必ず 反証フェーズを経た後 にしています。本稿で意識しているのは、質とスピードのバランスは大事ではありますが、やや スピードを優先する ということです。
1. 完璧を目指さず、まずは叩き台を作る
この段階で重要なのは「とりあえず叩き台を早くつくること」です。なぜなら、反証を行えば必ず以下のような発見が出てくるからです。
- 「この視点が考えられていなかった」
- 「ここの考えが浅かった」
- 「現場の人にまだ聞けていない」
反証の中で自然と改善点が浮かぶため、最初から完璧を求める必要はありません。
2. 競合調査は完璧にできない
特に競合調査は、本質的に 完璧を期すことが不可能 です。理由はシンプルで、競合が発信している情報が必ずしも真実とは限らないからです。
例えばBtoBの営業で負けた理由が、
- 競合企業の社長と顧客の社長がもともと知り合いだった
- 水面下での関係性(癒着)があった
- 競合が非常識なほど値引きをしていた
といったケースでは、公開情報だけを見ていても正しい理解には至りません。値引きが強みなのかというと、必ずしもそうではないのです。
そのため、競合調査は「完璧を目指すのではなく、まずはスピード重視で大枠を掴む」ことを優先します。
3. それでも競合調査は欠かせない
では「完璧にできないなら不要なのか?」というと、もちろんそうではありません。
結局、消費者は意思決定の際に必ず他社商品と比較をしています。そのため、競合調査を怠れば、自社の提供価値が他社と被ってしまうリスクが高まります。
競合調査の目的は、「どんなリスクが存在するかを把握すること」 にあります。そして反証を行えば、そのリスクはさらに明確化されていきます。もちろんリソースには限りがあるため、すべてのリスクに対応できるわけではありません。だからこそ、「どのリスクに対応すべきか」 の意思決定が重要になります。これはAIにはできない領域であり、人間の役割です。
4. ターゲットは最後にシンプルにまとまる
市場調査や競合調査、インサイト探索を経て、最終的にはターゲット設定に行き着きます。コアターゲットや戦略ターゲットを明確にし、市場における変数(人口動態、価格帯など)を整理してまとめるのは最後のステップです。
興味深いのは、このプロセスを踏んだ末に出てくるターゲットは、意外と 「言われてみれば当たり前だよね」 というシンプルな結論になることが多い、という点です。しかし、そのシンプルさに至るまでの検証プロセスこそが戦略の精度を高めるのです。
>> 「【AI × 人】マーケティング戦略の作り方 - What・課題編」
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