【AI × 人】マーケティング戦略の作り方 - Who・インサイト編
【AI × 人】マーケティング戦略の作り方 - Who・インサイト編

【AI × 人】マーケティング戦略の作り方 - Who・インサイト編

※本編は「人」と「AI」を掛け合わせて実施します。

インサイトを正確に捉えられないまま戦略を立てると、施策は的外れになりやすく、成果も出づらくなります。

その原因の多くは、お客さまの本音や行動背景を十分に深掘りできていないことにあります。

実際、お客さまの意思決定は感情・状況・環境要因が複雑に絡み合っており、表面的なニーズ分析では限界があります。

本稿では、「なぜ」を繰り返す深掘り質問や、“不”に基づく分析、購入前後の心理フロー整理など、インサイトを抽出する具体的な手法を体系的に紹介します。

「インサイト」の具体的な導き方

質的データの確認

  • 顧客アンケートやインタビューを活用し、下記の確認。
    • 購入前の悩み・課題は?
    • なぜ「〇〇」を買ったのか?
    • 「〇〇」による結果・成果・満足・感想は?

※「質的データの確認」は極力「人」が実施することを推奨。日本語は特に文脈・表現によってAIが正しく判断できない場合があります。

※読み取り方は人によって異なる。型としてはWOWOWコミュニケーションズさまの「インサイトの見つけ方」を推奨(フォーム入力が必要です)

「なぜ?」の深堀り

  1. A:なぜ人は〇〇(= 商材カテゴリー)が欲しいのか?
  2. B:なぜ人は「A」を求めるのか?
  3. C:なぜ人は「B」を求めるのか?
  4. D:なぜ「C」の答えは〇〇( = 自社・サービス名)でないとダメなのか?
  5. E:「C」の回答を求めている人はどんな人か?
  6. F:「C」の回答を求めている人は、他に何を求めているのか?
  7. G:「C」の回答を求めていない人は、どんな人か?

※「1」の回答は、できれば顧客インタビューから抜粋。インタビュー結果がなければAIで叩きを作り、社内で議論。

「なぜの深堀り」プロンプト

プロンプト実施前の前提

  • 顧客インタビューがあれば「質的データの確認」の項目毎にWord または PDF で事前にデータを整理しておく ※参考データ
  • 顧客インタビューがなければ、AIに出してもらう。
  • 「A」の回答は「AI」の出力だけでなく、「人」による回答も付加する。
前提は「マーケティング戦略を構築すること」です。
戦略を作る上では顧客インサイトが一つの重要な要素となります。
故に、今回の目的は「顧客インサイトを導き出すこと」です。

これから「なぜの深堀りフレームワーク」(A〜G)をステップごとに実施します。

## フレームワークの定義
A:なぜ人は{ここに自社カテゴリー}が欲しいのか?
B:なぜ人は「Aの答え(=直接の理由)」を求めるのか?  
 ※Aの答えを繰り返すのではなく、その背景・動機・上位目的を掘り下げること  
C:なぜ人は「Bの答え(=背景理由)」を求めるのか?  
 ※Bの答えを繰り返すのではなく、さらに根源的な目的を掘り下げること  
D:なぜ「C」の答えは{ここに商品・サービス名を入力}でないとダメなのか?
E:「C」の回答を求めている人はどんな人か?
F:「C」の回答を求めている人は、他に何を求めているのか?
G:「C」の回答を求めていない人は、どんな人か?

## 実施ルール
- A〜Gは一気に出さず、毎回1問ずつ深掘りする。
- こちらから「次はA」「次はB」と指示を出すので、その質問にのみ答える。
- 回答は「論理的に3〜5パターン程度」提示し、補足の説明も加える。
- 各回答は、必ず **前ステップの答えをさらに深掘りした理由** にすること(繰り返しはNG)。
- 前提1(顧客インタビュー情報あり)の場合:添付Wordファイルの情報を必ず優先する。
- 前提2(顧客インタビュー情報なし)の場合:AIの知識や推論でAから回答を生成する。

理解したら、まずはAを実施してください。

※「AI」によるAの回答に不足・修正があれば「人」が実施。

※「D:なぜ「C」の答えは〇〇( = 自社)でないとダメなのか?」は「AI」だけでなく「人」でもディスカッションする。

購入フローの心理

購入前

どんな気持ち?

気持ちに対して、どんな行動を取る?

購入時

どんな気持ち?

気持ちに対して、どんな行動を取る?

購入後

どんな気持ち?

気持ちに対して、どんな行動を取る?

※理想は顧客インタビューの実施。なければ、下記のプロンプトを活用。

「購入フローの心理」のプロンプト

あなたはマーケティング戦略を立てるプロのリサーチャーです。
以下の「商品・サービス」を購入する顧客の心理と行動を整理してください。

指示

出力は「購入前 → 購入時 → 購入後」の順番で、3回に分けて行ってください。

まずは 購入前のみ を出力してください。

私が「次へ」と指示したら、購入時を出力してください。

さらに「次へ」と指示したら、購入後を出力してください。

各フェーズでは「どんな気持ちか?」「その気持ちに対してどんな行動を取るか?」を明確に示してください。

気持ちと行動はそれぞれ10個ずつ 出してください。

商品・サービス

{ここに商品・サービス名を入力}

出力フォーマット

購入前
気持ち:
1.
2.
…
10.

行動:
1.
2.
…
10.

(購入時・購入後も同様に出力)

どの“不”に当てはまる?

  • 生死
  • 飢え
  • 危険
  • 欲求不満
  • 不自由
  • 不平等
  • 家族危機
  • 無共感
  • 無情報
  • 退屈
  • 不潔
  • 不効率
  • 不便
  • 低品質
  • 時代遅れ
  • 赤字
  • 無価値

「どの“不”に当てはまる?」のプロンプト

あなたはマーケティング戦略を立てるプロのリサーチャーです。
以下の「商品・サービス」が、顧客のどの“不”に当てはまるのかを分析してください。

指示

下記の“不”リストから、必ず1つ以上選んでください。

該当する理由を、顧客の心理・行動の観点から具体的に説明してください。

複数に当てはまる場合は、優先度の高い順にランキング形式で示してください。

不のリスト

生死

飢え

危険

欲求不満

不自由

不平等

家族危機

無共感

無情報

退屈

不潔

不効率

不便

低品質

時代遅れ

赤字

無価値

商品・サービス

{ここに商品・サービス名を入力}

出力フォーマット

該当する“不”:

{不の名称}(理由:〜〜〜)

{不の名称}(理由:〜〜〜)
…

ニーズの種類はどれ?

  • Family:家族:子供の塾、家族の健康
  • Anxiety:不安:保険商材、スポーツジム
  • Self satisfaction:自己満足:くつろぐ等、高級フィギュア、オーダーメイド
  • Human relation:対人関係:ダイエット、エステ/美容院、化粧品
  • Emergency :緊急性:鍵開け工事、水道漏れ、パソコンデータ復旧
  • Return:リターン:集客媒体、コスト削減

「ニーズの種類はどれ?」のプロンプト

あなたはマーケティング戦略を立てるプロのリサーチャーです。
以下の「商品・サービス」が、顧客のどの「ニーズ」に当てはまるのかを分析してください。

指示

下記の「ニーズの種類」リストから、必ず1つ以上選んでください。

該当する理由を、顧客の心理・行動の観点から具体的に説明してください。

複数に当てはまる場合は、優先度の高い順にランキング形式で示してください。

ニーズの種類

Family:家族(例:子供の塾、家族の健康)

Anxiety:不安(例:保険商材、スポーツジム)

Self satisfaction:自己満足(例:くつろぐ、高級フィギュア、オーダーメイド)

Human relation:対人関係(例:ダイエット、エステ/美容院、化粧品)

Emergency:緊急性(例:鍵開け工事、水道漏れ、パソコンデータ復旧)

Return:リターン(例:集客媒体、コスト削減)

商品・サービス

{ここに商品・サービス名を入力}

出力フォーマット

該当するニーズ:

{ニーズ名}(理由:〜〜〜)

{ニーズ名}(理由:〜〜〜)
…

結論

  • 結論、顧客インサイトは?

「顧客インサイトまとめ」のプロンプト

「結論、顧客インサイトは?」プロンプト

あなたはマーケティング戦略を立てるプロのリサーチャーです。
これまでに以下5つの分析を実施済みであり、その結果のドキュメントを添付します。

質的データの確認

なぜの深堀り(A〜Gステップで顧客がその商材を求める背景を論理的に分解)

購入フローの心理(購入前/購入時/購入後の気持ちと行動の変化)

どの“不”に当てはまる?(顧客が抱えている「不」を特定し、優先度をつけたランキングを作成)

ニーズの種類はどれ?(Family, Anxiety, Self satisfaction, Human relation, Emergency, Return のいずれかに分類)

指示

これら5つの分析結果を総括し、**「結論:顧客インサイト」**を導き出してください。

出力フォーマット

結論:顧客インサイト

一言で言うと? → {簡潔な表現}

詳細説明 → {背景や理由を含めた300〜500文字程度の説明}

補足視点 → {今後マーケティング戦略に活かすべき示唆を2〜3点、箇条書きで}

追加で必ず以下3つを抽出すること

意思(インサイト)
 - 人を動かす隠れた心理は?
 - 結局、インサイトは何か?理由は?

利害(意思決定軸)
 - 何が意思決定をわけるのか?
 - このカテゴリーでのプレファレンスは?
 - 購入の意思決定要素をできるだけ多く列挙する(例:価格、ブランド、品質、利便性、合理・非合理な要素など)

行動(認知から行動の流れ)
 - 認知から購入・利用までの行動の流れを整理
 - ターゲット層によって異なる場合は分岐を明示

実施ルール

5つの分析結果を必ず参照し、論理的に一貫性を持たせること。

意思=隠れた心理、利害=意思決定軸、行動=プロセス として3つの観点を必ず網羅すること。

分析データが不足している場合は、AIの知識や推論で補完し、仮説であることを明示すること。

意識していること「最初は完璧でなくて大丈夫」

顧客インサイトを抽出する上で、いくつか意識してることがあります。

1. 最初は完璧でなくていい

顧客インサイトを探るとき、最初から完璧を求める必要はありません。大切なのは ありったけの情報を一度整理しておくこと です。なぜなら、戦略構築のプロセスの中では最終的に「反証」を行うため、初期段階では完璧さよりもスピードと網羅性が重要だからです。

また情報収集は終わりがないため、必ず期限を設けることが必要です。私の場合は、どんなに長くてもインサイト探索を含む戦略全体を3ヶ月以内に立て切ることを目安としています。期間を長くするか短くするかは自由ですが、いずれにせよ期限を切ることがポイントです。

2. 戦略キャンバスとの連動を意識する

顧客インサイトを探るときは、後に作成する戦略キャンバスを見据えることが重要です。特に、商品やサービスの購入時に顧客が重視する「利害( = 何が意思決定をわけるのか?)の要素」は、戦略キャンバスを作成する際の基盤となります。

そのため、情報収集の段階で「これは意思決定の利害に関わる軸だ」と感じた点は必ずメモしておくこと。これが後の分析を格段に楽にします。

3. 質的データを重視する

顧客インサイトを深く掘り下げる上で欠かせないのが 質的データ です。森岡毅氏も著書の中で「質的データからしか未来は描けない」と述べています。

会社の生存には正しい現状・近未来の判断と正しい中長期の判断が必要です。

量的調査は、現状の商品の改善やカテゴリーの延長線上の新商品に関する意思決定には非常に役立ちます。

しかし、中長期の未来は量的調査からは必ずしも出てきません。

それは、プレファレンスが感情的判断であり、人々の現状においては同じような状況により大きく左右されるからです。

引用元:確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 p.152

数値や定量データだけではなく、顧客の生の声や行動背景を理解することが重要です。

また、インサイトを見つけるプロであるWOWOWコミュニケーションズさまでは、質的データを扱う際には、特に次の2点を強く意識しています。

  • すべてを読み込むこと:アンケートが100件であろうと数千件であろうと、必ず一度すべての回答に目を通す。
  • 人間の目で読み込むこと:AIやテキストマイニングも活用はしますが、最終的には人が解釈することが欠かせません。

日本語の解読において、機械は正しく判断できない場合があります。

例えば「やばい」という言葉は、テキストマイニングだと、おそらく1つのワードとしか見られません。

しかし、全体の文章を読んだ時に、何に対して「やばい」と言ってるのかによって、「やばい」がネガティブなのか、ポジティブなのか変わってきます。

この判別が、機械だとまだ難しいと考えています。

文章全体を読み、何に対して「やばい」と言ってるのか。意味の捉え方であったり、意訳したり、何が「やばい」というキーワードを引き出しているかなど、やはりツールだと分からない部分が日本語だと多分にあります。

そのあたりの文脈を捉え、意味を読み解く。

また、特定の人が言っているのか、全体で言っているのかなども含め、重要なキーワードが何かを見つけるには「人の目」が一番だと考えています。とは言え、機械が得意な点もあるので、人の目と機械、両方使って分析を行なっています。

引用元:“お客さまの声”の集め方。最後は数万件を「人の目で見る。」

質的データを読み解く工数は、多くかけてもいいです。ただ、期限は設けます。

まとめると、インサイトの発見では「完璧を目指さない」「期限を決める」「質的データを徹底的に読み込む」「戦略キャンバスとつなげて考える」という4つのポイントが重要です。これらを意識することで、よりリアルで実践的なインサイトを導き出せるようになります。

>> 「【AI × 人】マーケティング戦略の作り方 - Who・市場調査と競合調査編

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