どれだけ経験や直感に自信があっても、人は無意識のうちにバイアスに支配されます。
その結果、前提が誤っていても気づかないまま戦略を積み上げ、後から「なぜ成果が出ないのか」と悩むケースは少なくありません。
こうしたリスクを回避するために有効なのが「反証」というプロセスです。
本稿ではH. Scott Fogler and Nihat M. Gurmen(2008)による論文『Thought on Problem Solving』をベースにした 反証質問リスト14問 を活用し、戦略の前提を揺さぶりながら磨き上げる方法を解説します。
反証を取り入れることで戦略の強度を高め、より精度の高い戦略設計を行うための具体的なアプローチをご紹介します。
- 「Who・What」の反証方法
- 【準備】AIが反証しやすいよう、下記をドキュメントにまとめる
- Who・What の確定
- なぜ、反証するのか?
- 1. なぜ“反証”というプロセスが必要なのか?
- 2. 無意識のうちにかかる“バイアス”には、どんなものがあるのか?
- 3. 反証をしないまま戦略を立てると、どんなリスクがあるのか?
- 4. 「反証」と「否定」や「批判」は何が違うのか?
- 5. 反証を取り入れた戦略と、そうでない戦略は、何がどう違うのか?
「Who・What」の反証方法
【準備】AIが反証しやすいよう、下記をドキュメントにまとめる
- 目的・ゴール
- Who
- コアターゲット
- 戦略ターゲット
- What
- 提供価値
- 差別化要素(戦略キャンバス)
- ブランドエクイティ
サンプル:「高級焼肉屋の戦略」 ※左記のリンクをクリックすると、「コピーを作成しますか?」という画面が表示されます。安全なリンクですのでご安心ください。
戦略を反証する14つの質問
- 明確化「一言で言うと?」「小学生に説明してみて」
- 前提調査「その前提は何?」
- 証拠「それを証明できるものは何?」
- 視点:ポジ「それものすごくうまくいったらどうなる!?」
- 視点:ネガ「それ全然うまくいかなかったらどうなるの?」
- 視点:中立「うまくもいかず、失敗もしなかったらどうなる?」
- 視点:子供「そんなこと忘れて遊ぼうよ!僕ならこう考えるよ!」
- 視点:固定概念「でも、普通ならそれはこうではないでしょうか?」
- サンクコストの呪縛「過去のコストを一旦忘れたら、今後のコストは妥当?」
- 損失回避「それを続けて損失出ているのなら、損切りすべきでは?」
- コントロール幻想「それは本当にあたながコントロールできるものなの?」
- 完結志向「それは全て完結させる必要はあるの?」
- 多数の無知「他の人の意見は聞いたの?」
- 個人のアイデンティティ「それは自分のプライドによる意思決定では?」
プロンプト
あなたは戦略コンサルタントです。
私は「初期仮説」としてまとめた戦略ドキュメント(Who:コアターゲット・戦略ターゲット、What:提供価値・戦略キャンバス・ブランドエクイティを含む)をアップロードします。
このステップでは **Who・Whatを合計5回に分けて順番に反証**してください。
一度に全部やるのではなく、以下の順番で **1ブロックずつ実施**してください。
1. Who:コアターゲット
2. Who:戦略ターゲット
3. What:提供価値
4. What:戦略キャンバス
5. What:ブランドエクイティ
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### 1. 反証
各ブロックに対して、以下14問をすべて実施してください。
出力フォーマットは以下:
#### {番号}. {質問名}:「{元の質問文}」
- 【質問への回答】:ドキュメントを根拠にした答え
- 【気づき/指摘】:思考の穴やリスク、見落とし
- 【問い・議題】:必ず**そのブロックをさらに磨くための問い**を出すこと。他のブロックに逸れた問いは出さないこと。
**質問リスト(必ずすべて実施すること):**
1. 明確化:「一言で言うと?」「小学生に説明してみて」
2. 前提調査:「その前提は何?」
3. 証拠:「それを証明できるものは何?」
4. 視点:ポジ「それめっちゃうまくいったらどうなる!?」
5. 視点:ネガ「それ全然うまくいかなかったらどうなるの?」
6. 視点:中立「うまくもいかず、失敗もしなかったらどうなる?」
7. 視点:子供「そんなこと忘れて遊ぼうよ!僕ならこう考えるよ!」
8. 視点:固定概念「でも、普通ならそれはこうではないでしょうか?」
9. サンクコストの呪縛:「過去のコストを一旦忘れたら、今後のコストは妥当?」
10. 損失回避:「それを続けて損失出ているのなら、損切りすべきでは?」
11. コントロール幻想:「それは本当にあなたがコントロールできるものなの?」
12. 完結志向:「それは全て完結させる必要はあるの?」
13. 多数の無知:「他の人の意見は聞いたの?」
14. 個人のアイデンティティ:「それは自分のプライドによる意思決定では?」
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### 2. まとめ
14問の反証を踏まえ、**「問うべき設問ベスト5」**を抽出してください。
出力フォーマットは以下:
#### 問うべき設問ベスト5
1. 【設問】:〜
- 【理由】:〜のため。これを考えることにより〜が高まる。
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### 3. 選定ロジック(内部前提)
※この部分は出力には含めない。
AIは戦略当事者でも感情のある人間でもなく、完全な第三者かつIQの高い思考装置として動く。そのため“好き嫌い”や“思い込み”を排除し、論理的に見て最もクリティカルな問いを5つに絞る。人間の会議では避けられがちな問い(前提否定・損切り基準・感情バイアス)をあえて優先的に取り上げるというロジックで抽出すること。
また、【問い・議題】は必ず**そのブロックをさらに磨く問い**に限定すること。
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### 4. 次のブロックへ
各ブロックが終わったら必ず「次へ進みますか?」と確認し、ユーザーの指示があってから次のブロックに進めてください。
Who・What の確定
「質問リスト」の問い、または、「問うべき設問ベスト5」の問い。
どちらかの問いに対して回答し、「Who・What」を確定させます。
下記は、最終的に決めなければいけない要素です。
- コアターゲット
- 最重要ターゲットは何か?
- 戦略ターゲット
- 次に重要なターゲットは何か?コアターゲットとの違いは?
- 非ターゲット
- こちら側から狙わないターゲットは何か?
- 提供価値
- 自社の提供価値を一言で言うと何か?
- 戦略キャンバス
- 勝っている要素は何か?
- 今後、伸ばさないといけない要素は何か?
- 勝てない要素は何か?
- ブランドエクイティ
- お客さまに「どのようなイメージ」を持って欲しいのか?
なぜ、反証するのか?
結論、人間は誰しも思い込みやバイアスに支配されているからです。
だからこそ、どれだけ経験や直感に自信があっても、それを疑い直す「反証」の視点なしに戦略を組むのは危険です。反証は、間違った前提のまま突き進まないための“安全装置”であり、戦略を「削ることで磨く」ための思考技法です。
私がマーケティング戦略設計の現場でよく使っている**反証質問リスト(全14問)**は、H. Scott Fogler and Nihat M. Gurmen(2008)による論文『Thought on Problem Solving』をベースに発展させたものです。
彼らは、創造的な問題解決には「疑うこと」「問い直すこと」が不可欠だと説いています。私の支援でも、戦略設計の過程でこの反証の問いを挟むことで、施策の精度・納得感・再現性が大きく変わってきました。
1. なぜ“反証”というプロセスが必要なのか?
人は無意識のうちに「うまくいくだろう」と期待する前提で物事を進めがちです。
特にマーケティングのように、意思決定にスピードと直感が求められる領域では、その傾向が強くなります。
反証とは、そうした無意識の前提や前のめりな期待に「それって本当に正しい?」と立ち止まる行為です。これにより、結果として判断の質が格段に上がります。
2. 無意識のうちにかかる“バイアス”には、どんなものがあるのか?
マーケティング領域で多く見られるのは以下のようなバイアスです。
確証バイアス:自分の仮説に都合の良いデータだけを拾ってしまう
サンクコストバイアス:これまでの投資や苦労をムダにしたくなくて撤退判断ができない
コントロール幻想:本当はコントロールできない要素まで自分たちで操作できると思い込んでしまう
アイデンティティ・バイアス:「自分らしさ」「信念」が意思決定に入り込んで合理性を曇らせる
反証とは、こうしたバイアスに一つひとつ疑問を投げかけ、冷静さを取り戻す工程でもあるのです。
3. 反証をしないまま戦略を立てると、どんなリスクがあるのか?
大きなリスクは、「そもそもの前提がズレているのに、そこに積み上げる施策が精緻になっていくこと」です。
表面上は筋が通っているように見えても、出発点がズレていれば結果は的外れになります。
マーケティングでは、こうしたズレが成果として出るまでにタイムラグがあるため、「なんかうまくいかない」の原因が後からしかわからないという構造的リスクを孕んでいます。
だからこそ、最初に「これは本当に正しい仮説か?」を問い直すことが不可欠です。
4. 「反証」と「否定」や「批判」は何が違うのか?
反証とは、“否定すること”ではありません。
むしろ、信じていることをより確かなものにするための問いです。
たとえば「うまくいく前提」で描いた戦略に対し、「もし全然うまくいかなかったら?」「そもそもそれ、コントロールできる?」と問い直すことで、むしろその戦略に対する確信や修正の余地が明確になります。
壊すのではなく、「削ることで磨く」。これが反証の本質です。
5. 反証を取り入れた戦略と、そうでない戦略は、何がどう違うのか?
最大の差は、「ブレにくさ」と「説明できる強さ」です。
反証を経て練られた戦略は、「なぜそうしたのか」「他の選択肢はなぜ外したのか」が説明できます。
これがあると、社内での合意形成やピボット時の判断が速くなります。逆に、反証を経ていない戦略は、実行フェーズで何かズレが起きたときに立て直すのが非常に難しい。
つまり、反証の有無は、戦略の「実行耐性」を決めるのです。
戦略とは、「進むこと」ではなく「進みながら戻らないための構造」をつくること。
その構造を支えるために、**反証という“問い直しの思考習慣”**は欠かせません。
Foglerたちの論文でも強調されていたように、問題解決とは「正解を探す」以上に「間違いを見逃さないこと」なのです。
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